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大阪地方裁判所 昭和63年(ワ)611号 判決

原告

(株)三和企画(大阪府豊中市)

被告

ミツギロン工業(株)(大阪府狭山市)

森本重男(大阪府狭山市)

新日本ケミカル・オーナメント工業(株)(大阪府岸和田市)

事実及び理由

第二事案の概要

一、(省略)

二、渡部一二の出願及び補正

1. 本件考案の実用新案登録出願は渡部一二がしたものであるが、昭和62年12月25日、同年3月3日に設立された原告に対し、右実用新案登録を受ける権利を譲渡し、原告はこれに基づいて昭和63年1月13日、特許庁長官にその旨の実用新案登録出願人名義変更届をした。

2. 右出願に対し、昭和61年12月3日付で拒絶理由通知がされた。渡部は、昭和62年2月26日、同日付で意見書とともに手続補正書を提出して、右出願当時の明細書の全文を補正したが、その際、当初明細書に「垂直板」と記載していた部材の表示をすべて「縦部材」と変更した。

3. 本件考案は、右補正後、出願公告(昭和62年8月12日)、設定登録(平成2年3月23日)されたものであり、同補正は、実用新案法9条1項で準用する特許法40条にいう「出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前にした補正」に該当する。

三、本件考案の構成要件及び作用効果

1. 構成要件(A図参照。以下「本件登録請求の範囲」という。)

(一)  トレイ内の食品を透明フッルムで包装する食品包装パックにおいて、

(二)  二股部に縦部材を連設し、さらにこの縦部材に傾斜板を連設してプラスチック製の間隔保持具を形成し、

(三)  この間隔保持具の二股部をトレイの側壁に係合させ、

(四)  食品を入れたトレイを透明フィルムで傾斜板の上面を押圧して包装するようにしたことを特徴とする食品包装パック。

2. 作用効果

(一)  間隔保持具で刺身などの食品との間隔を保つことにより、透明フィルムがトレイからはみ出した食品に密着して押圧することはなく、このため食品の外観(見映)を良好にし、かつ鮮度を保つことができる。

(二)  二股部をトレイの側壁に係合することにより、間隔保持具はトレイの側壁にワンタッチで係合固定されるので、トレイの大きさ、形状に関係なく、パック包装作業を迅速、かつ確実に行うことができ、しかもトレイの底に間隔保持具を据えるスペースを必要とせず、見映も良好であり、さらにトレイに溝を有する突起物や、段部を設ける必要がない。

四、被告らの行為

1. 被告ミツギロン工業株式会社は、業として「ラップガード」との商品名で、昭和61年6月から昭和62年8月ころまで別紙物件目録記載1ないし3の各物件(B図参照。以下、順次「イ号物件一」、「イ号物件二」、「イ号物件三」という。)を製造・販売していたが、昭和62年7月ころからは同目録記載四ないし六の各物件(C図参照。以下、順次「イ号物件四」、「イ号物件五」、「イ号物件六」という。)を製造・販売している。

2. 被告森本は、被告ミツギロンの代表者として、同被告のイ号物件一ないし六製造・販売業務を指揮して来た。

3. 被告新日本ケミカル・オーナメント工業株式会社は、被告ミツギロンから購入して、業として「ラップガード」との商品名で、昭和61年6月から昭和62年8月ころまでイ号物件一ないし三の販売をしていたが、昭和62年7月ころからはイ号物件四ないし六を販売している。

五、被告ミツギロンの権利(省略)

六、イ号物件一ないし三

イ号物件一ないし三を食品包装パックに使用した場合の構成及び作用効果は、次のとおりであり(弁論の全趣旨)、本件考案の技術的範囲を本件登録請求の範囲の記載文言に基づいて定めた場合、イ号物件一ないし三を使用した食品包装パックの構成は、対応する本件考案の構成要件を充足し、本件考案の技術的範囲に属する。

1. 構成(省略)

七、イ号物件四ないし六

イ号物件四ないし六は被告考案の実施品であり、これを食品包装パックに使用した場合の構成及び作用効果は、次のとおりである。

1. 構成

(一)  トレイ内の食品を透明フィルムで包装する食品包装パックにおいて、

(二)  トレイの側壁の内面部分に当接する2本の受止め部分c、cと、トレイの側壁の外面を押圧するように曲成された1本の挟持部分dとからなる3本足構造の嵌着挟持部aに円弧状板(支え部)bを連設してプラスチック製の間隔保持具(スペーサ)を形成し、

(三)  この間隔保持具(スペーサ)の嵌着挟持部aをトレイの側壁に挟着させ、

(四)  食品を入れたトレイを透明フィルムで円弧状板(支え部)bの上面を押圧して包装するようにしたことを特徴とする食品包装パック。

2. 作用効果

(一)  本件考案の作用効果(一)と同旨。

(二)  トレイの側壁の内面部分に当接する2本の受止め部分c、cと、トレイの側壁の外面を押圧するように曲成された1本の挟持部分dとからなる3本足構造の嵌着挟持部aをトレイの側壁に挟着する(挟持部分dがトレイ側壁部分を挟持する)ことにより、トレイ側壁上において間隔保持具(スペーサ)の直立姿勢が保たれるので、トレイの底に間隔保持具(スペーサ)を据えるスペースを必要とせず、見映も良好であり、さらにトレイに溝を有する突起物や、段部を設ける必要がなく、しかも、フィルムを簡単に被せ付ける作業ができ、パック包装作業の効率も良い。

(三)  フィルムが接触する円弧状板(支え部)bが円弧状に形成されているから、フィルムの張力に合わせて円弧状板(支え部)bが弾性変形してよく馴染み、フィルムが破損したりすることがなくなる。

八、本訴請求の概要(省略)

九、主たる争点

1. 本件考案の構成要件(二)の「縦部材」は、当初明細書記載の「垂直板」に限定されるか。

2. イ号物件四ないし六を食品包装パックに使用した場合、本件考案の構成要件(二)ないし(四)を充足するか。すなわち、

(一)  イ号物件四ないし六は、本件考案の構成要件(二)の間隔保持具を構成する二股部、縦部材及び傾斜板を備えているか。

(二)  イ号物件四ないし六の円弧状板は、本件考案の構成要件(二)の間隔保持具の上部の単なる設計変更ないし均等物か。

(三)  被告考案及びその実施品であるイ号物件四ないし六は、本件考案の構成要件(二)の間隔保持具の上部に円弧形状を、同下部(二股部)に挟持部分をそれぞれ付加したものか。

3. 右2が肯定された場合、イ号物件四ないし六は、本件考案に係る食品包装パックの製造にのみ使用する物か。

4. 右2が肯定された場合、被告ミツギロン及び被告新日本のイ号物件四ないし六の販売行為は、末端ユーザーの本件実用新案権侵害行為を幇助する行為か。

5. 被告らが支払うべき補償金・損害の金額

第三争点に関する当事者の主張(省略)

第四争点等に関する判断

一、争点1(本件考案の構成要件(二)の「縦部材」は、当初明細書記載の「垂直板」に限定されるか。)

1. 要旨変更の有無

出願人渡部は昭和62年補正において、本件実施例図に記号4で示されている部材につき、当初明細書に「垂直板」と記載していたのを「縦部材」と表示を変更するとともに、「実施例」の項に、「縦部材4……は、必ずしも二股部3に対して垂直なもののみを意味するものではなく、ある程度、傾斜していても、……よい。」との説明を付加した。

当初明細書においては、「垂直板」が考案の構成要件とされているが、同明細書の考案の詳細な説明欄には、垂直板に関して「二股部3に垂直板4を連設し、さらにこの垂直板4に傾斜板5を連設し……」と記載されているだけで、垂直板の機能及び方向についての説明はない。また、本件実施例図には二股部及びトレイの底面に対して直立(垂直方向)のものが実施例として示されているが、トレイの形状は、トレイの底面に対して側壁が直角のもの、やや外側に広がったものなど種々あり、しかも側壁に強度を持たせるために、側壁の上端に水平方向に広がったフランジ部を設けたものもあるから、垂直板の「垂直」を、(一)二股部及びトレイの底面に対して垂直方向と解したのでは、側壁が底面に対して直角(垂直方向)に立っているトレイのみに使用する間隔保持具ということになって不合理であり、(二)二股部に対して垂直方向と解したのでは、トレイの底面に対する方向が一定しないし、(三)トレイの底面に対して垂直方向と解したのでは、二股部に対する方向が一定しないから、本件実施例図だけからでは「垂直板」が如何なるものであるかを明らかにすることはできない。そこで、当初明細書の考案の詳細な説明の「考案が解決しようとする問題点」、「作用」及び「考案の効果」各項の記載を参酌して、当初明細書にいう「垂直板」が如何なるものであるのかを検討するに、間隔保持具においてトレイ側壁に係合する二股部と透明フィルムを保持する傾斜板とを連結させるとともに、間隔保持具をトレイ側壁に係合させた場合、トレイに盛付けられた食品がその側壁の高さより上にはみ出していてもフィルムがこれに密着しないように、上方に位置する傾斜板をある程度の高さで支持するために、トレイの底面から縦(上方)に立上がる部材、すなわちトレイの底面から縦方向にある一定の長さを有することが必要とされる部材を指称したものと解することができる。そうすると、「垂直板」は、トレイの底面から縦方向にのびていることを要件とはしても、その角度についてはトレイの底面に対し垂直のものに限定されるものではないということになる。

これに対し、右補正後の明細書の全記載によれば、その技術的内容は、当初明細書記載のそれと同じく、トレイの側壁に間隔保持具を係合し、上方で透明フィルムを支えることにより食品包装パックをつくるために、(1)トレイの側壁に二股をかけてこれに間隔保持具を係合させる部材(二股部)、(2)その上に食品に触れない状態でフィルムを上方に持上げる部材(但し、その表示を垂直板から縦部材に変更)、(3)さらに上方でフィルムを直接支える部材(傾斜板)とで間隔保持具を構成したというものであるから、「縦部材」とは、当初明細書記載の「垂直板」と実質的に同一のものと解することができる。

従って、「縦部材」は当初明細書記載の「垂直板」と同旨のものであり、昭和62年補正が垂直板を縦部材と表示を改めたことによって、考案の要旨が変更されたとはいえないから、要旨変更を前提とする被告らの主張は採用できない。

2. イ号物件一ないし三の製造・販売差止請求の当否

イ号物件一ないし三を使用した食品包装パックの構成は、対応する本件考案の構成要件を充足し、本件考案の技術的範囲に属することについて争いがない。しかも、イ号物件一ないし三は専ら食品包装パック用にしか販売されておらず、イ号物件四ないし六のように園芸用に販売されたことはないから、イ号物件一ないし三はいずれも本件考案に係る食品包装パックの製造にのみ使用するものであると認められる。

しかしながら、被告ミツギロンは現在イ号物件一ないし三を製造・販売しておらず、かつ将来これを製造・販売するおそれもない。また、被告新日本は現在イ号物件一ないし三を販売しておらず、かつ将来これを販売するおそれもないから、原告の右各被告に対するイ号物件一ないし三の製造・販売ないし販売差止の請求は理由がない。

二、争点2(イ号物件四ないし六を食品包装パックに使用した場合、本件考案の構成要件(二)ないし(四)を充足するか。)

1. 本件考案の構成要件(二)について

本件考案の構成要件(二)の間隔保持具を構成する、「傾斜板」、「縦部材」及び「二股部」と表示されている部分の形状(構造)及び機能について、本件明細書の記載及び本件実施例図を参酌して考察するに、(省略)

2. 本件考案の間隔保持具(構成要件(二))とイ号物件四ないし六との対比

イ号物件四ないし六の円弧状板は、機能面からみると、本件考案の傾斜板と縦部材とからなる間隔保持具の上部に相当するものである。しかしながら、形状面からみると、円弧状板は、異なる部材を円弧によって連設しているのではなく、全体が側面視において円弧状の板、すなわち境目のない一体としての円弧状の板であり、透明フィルムで押圧しながらパックしたときにおいても、直接フィルムを保持する部分と右部分を支持する部分とが、連設部で折れ曲がり、側面視において連設部が角を形成するものではない点において、本件考案の間隔保持具とその形状を異にする。しかも、イ号物件四ないし六は、フィルムが接触する支え部を円弧状に形成したことによって、これを食品包装パックに使用した場合、フィルムの張力に合わせて支え部が弾性変形してよく馴染み、フィルムの破損がなくなるとの、本件考案の間隔保持具にはない作用効果を奏する。従って、イ号物件四ないし六は、本件考案の構成要件(二)の間隔保持具の傾斜板及び縦部材を具備すると認めることはできない。

この点につき原告は、本件考案の間隔保持具上部の形状には限定がなく、イ号物件四ないし六のように間隔保持具上部の形状が円弧状であるものも本件考案の間隔保持具の一実施例にすぎないと主張するが、(省略)本件考案は、その構成要件(二)の間隔保持具上部の形状に傾斜板と縦部材との境目がない円弧状のものを含むとの意思の下に出願された考案であるとは到底考えられないから、原告の右主張は採用できない。

3. 単なる設計変更ないし均等物との主張について

原告は、イ号物件四ないし六の円弧状板は、本件考案の間隔保持具の傾斜板及び縦部材の単なる設計変更ないし均等物にすぎない旨主張するが、本件明細書の考案の詳細な説明の「従来の技術」及び「考案が解決しようとする問題点」の項の記載によれば、本件考案出願当時、(省略)が知られており、間隔保持具を使用してトレイ(容器)の上方に透明フィルムを持上げるという包装方法自体は本件考案出願当時公知公用のものであったと認められる。そして、右「考案が解決しようとする問題点」の項には、本件考案の目的は、右従来技術の抱かえていた包装作業の能率及び包装後の見映の悪さ等の問題点を解決することにある旨の記載があること及び「実施例」の項には、「2は本考案の要部である……間隔保持具である。」との記載があること、並びに「物品の形状、構造又は組合せに係る考案の保護及び利用を図ることにより、その考案を奨励し、もって産業の発達に寄与する」との実用新案法の目的に照らすと、本件考案の特徴的本質的部分は、構成要件(二)の間隔保持具の形状に存することは明らかである。

このことに加えて、前記1、2で判示した諸点を総合考慮すると、イ号物件四ないし六は、本件考案の特徴的本質的部分である傾斜板及び縦部材の形状を、本件考案にはない前記2の作用効果を奏する円弧状板に置換したものと認めるべきであるから、本件考案の間隔保持具の単なる設計変更ないし均等物にすぎないということはできない。

4. 利用関係の主張について

前示のとおりイ号物件四ないし六の円弧状板は、本件考案の傾斜板及び縦部材とは全く構成を異にし、本件考案の構成要件(二)の間隔保持具の構成に単に円弧状板との構成を付加したものとはいえないから、利用関係を論ずる余地はなく、利用関係についての原告の主張は採用できない。

5. イ号物件四ないし六の製造・販売差止等請求の当否

以上によれば、イ号物件四ないし六を食品包装パックに使用しても本件考案の技術的範囲に属すると認めることはできないから、争点3(間接侵害の成否)、争点4(直接侵害の幇助の成否)について判断するまでもなく、原告の被告らに対するイ号物件四ないし六製造・販売差止請求、右各物件に関する補償金・損害賠償請求は、すべて理由がないといわざるを得ない。

三、争点5(被告らが支払うべき補償金・損害の金額)について

以上によれば、争点5について判断の対象となるのはイ号物件一ないし三のみとなる。

1. 補償金

(一)  本件考案出願公開後、出願公告前の警告

渡部は、被告ミツギロンに対し、昭和61年7月23日到達の書面により、イ号物件一ないし三について警告したことが認められる。なお、右書面の宛名はミツギロン工業株式会社(代表取締役森本重男)とされているが、代表者は同じ被告森本であり、かつ、被告森本は同会社の代表者として同社名義で、渡部に対し、右書面を受理した旨及びイ号物件一ないし三が本件考案の技術的範囲に属さないから今後も販売を継続する旨を記載した同月28日付回答書を送付しているから、渡部は、被告ミツギロンに対し、同月23日、本件考案の補償金請求権行使のための警告をしたものと認めるのが相当である。

原告は、(1)被告新日本に対し、右同日(昭和61年7月23日)右同様の警告をした、(2)同被告は、イ号物件一ないし三の販売開始当時から、右各物件が出願公開された本件考案に係る食品包装パックの製造にのみ使用する物であることを知っていたと主張するが、右各事実を認めるに足りる証拠はない。しかしながら、①渡部は、被告ミツギロンに対し、昭和61年10月3日到達の書面により、イ号物件一ないし三について2度目の警告をした際、被告新日本に対しても同趣旨の警告をすべく、同月2日、同被告に対し右と同内容の書面を発送したが、同月3日、同被告は右書面の受取を拒否したことが認められること、②前示のように被告新日本のイ号物件一ないし三の仕入先である被告ミツギロンに対してはそれ以前の同年7月23日に既に前記の警告がされていたことに照らすと、被告新日本は、右①の書面の記載内容を知ったうえでその受取を拒否したものと推認できる。そうすると、渡部は、被告新日本に対し、同年10月3日、本件考案の補償金請求権行使のための警告をしたものと認めるのが相当である。

なお、右認定の被告ミツギロン及び被告新日本に対する各警告はいずれも昭和62年補正の前になされたものであるが、当初明細書記載の「垂直板」の意味は前示のとおりであるから、右各警告はいずれも本件考案の補償金請求権行使のための警告たり得る。

(二)  補償金請求対象期間内のイ号物件一ないし三の販売実績

従って、補償金請求の対象となる期間は、被告ミチギロンについては昭和61年7月24日(同被告に対して最初の警告をした日の翌日)から昭和62年8月11日(本件考案の出願公告日の前日)までの間であり、被告新日本については昭和61年10月4日(同被告が警告書の受取を拒否した日の翌日)から昭和62年8月11日(前同)までの間となる。(省略)

(三)  実施料相当額

本件考案の実施に対し通常受けるべき金銭の額を算定するための実施料率については、他によるべき資料がないので、当裁判所に顕著な国有特許権実施契約書(官有特許運営協議会決定、昭和25年2月27日特総第58号、改正昭和42年5月26日特総第533号、改正昭和47年2月9日特総第88号、特許庁長官通牒)の「実施料算定方式」を参照することとし、これによれば、実施料率は、「実施料率=基準率×利用率×増減率×開拓率」の算定によって求められる。そして、販売価格を基礎として実施料を算定する場合の基準率は、実施価値の上、中、下により4、3、2パーセントの中から選択されるものであるが、本件考案については、実施価値を高いとも低いとも認めるべき特段の資料もないから、実施価値を「中」とみて基準率を3パーセントとするのが相当である。次に、利用率、増減率及び開拓率については、いずれも100パーセントから減ずべき特段の事情も認められないから、いずれも100パーセントとすべきである。そうすると、本件考案の実施料率は、前記算定式により3パーセントとなる。(省略)

2. 損害

(一)  原告の独占的通常実施権

前記二2で判示したところによれば、原告設立(昭和62年3月3日)後、従って本件考案の出願公告日(同年8月12日)以降は、原告が本件考案の構成要件の要部である間隔保持具を製造・販売していたことが認められ、かつ、当時渡部と原告との間には右実施につき黙示の独占的通常実施権設定契約がされていたものと推認できる。

(二)  本件考案の出願公告日以降のイ号物件一の販売実績(省略)

(三)  両被告の責任

前記1(一)で判示した経緯によれば、両被告には、右各販売行為(本件考案の仮保護の権利の間接侵害行為)について過失があったものと認められる。

(四)  イ号物件一の販売による利益額(利益率)(省略)

(五)  原告の損害額

前示のとおり、原告は、昭和62年8月当時独占的通常実施権者として、本件考案の構成要件の要部である間隔保持具を独占的に製造・販売し、本件考案の実施にかかる利益を独占し得る地位を有しており、イ号物件一は本件考案の食品包装パックの製造にのみ使用される間隔保持具であって、その販売行為は本件考案の仮保護の権利の間接侵害行為であるから、特段の事情がない限り、右両被告がイ号物件一の販売により得た利益額をもって、右両被告の各販売行為と相当因果関係にある損害額と推認するのが相当である。

3. 被告森本の責任

これまでにみてきたところによれば、被告森本は、被告ミツギロンの代表者として、同被告のイ号物件一ないし三製造・販売業務(本件考案に関する侵害行為)を指揮するにあたり過失があったものと認められる。

4. 債権譲渡

渡部は、昭和63年1月13日、原告に対して、本件考案に関する被告3名に対する補償金請求権及び損害賠償請求権を譲渡し、右債権譲渡の通知は、同年3月7日被告3名に到達した(争いがない)。

5. 結論

以上によれば、原告の本件補償金・損害賠償請求は、被告ミツギロン及び被告森本に対して各自金60万1663円(不真正連帯債務)、被告新日本に対して金7万9286円の支払いを求める限度で理由がある。

(庵前重和 長井浩一 辻川靖夫)

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